2016/06/01看護の日・看護週間
金澤泰子氏 特別講演『天使がこの世に降り立てば』atエルガーラホール
闇の中にこそ光がある。生きてさえいれば、絶望はしない
世界一悲しい母親から、世界一幸せな母親に
講師の金澤泰子氏は、ダウン症の書家 金澤翔子さんのお母様。
30年前、出産後に娘が重い障がいと告知を受けました。
悲しさのあまり翔子さんのことを隠して育て、ともに死のうとまで考えた悲嘆の日々…。
その当時の世界一悲しい母親から、現在、世界一幸せな母親になった、というお二人の歩みを語られました。
金澤さんは、翔子さんを遊ばせるために自宅で書道教室を開き、小学校3年生まで普通のクラスへ通学させました。
「翔子ちゃんがいるとクラスが優しくなる」と皆と楽しい学校生活を送っていたところ、小学校4年生の頃、養護学校への転校を迫られます。そこからは学校に行くことができず、日中、般若心経を書いて過ごし、この時に書の基礎を身に付けました。
泣きながら子育てをする日々でしたが、翔子さんは母の頬を流れる涙に両手を添えてくれる優しい子でした。
その後、養護学校に電車に乗って楽しく通学できるようになりましたが、高等部を終えて作業所へ行く際にトラブルがあり、また家で過ごすことになります。
そこで亡き夫が、「翔子は字が上手い」と言っていたのを思い出し、翔子さんが二十歳になる頃に銀座書廊で個展を開くことを目指し書道に挑みました。
初めての書展では、書に涙する人が現れ、世の注目を浴びました。
「唯心偈(ゆいしんげ)…すべては心が作り出すとの教え」のとおり、素晴らしい感性と、魂の純度が高い心、不思議な優しさが彼女とその書に表れていると語られました。
書家となった翔子さんは、建仁寺、建長寺の書展、NHK大河ドラマ「平清盛」の題字を担当、福島県いわき市には東日本の復興を願った書家として初めての美術館「金澤翔子美術館」が開設されるなど、多くの人に感動を与え続けています。
何度か語られた「闇の中にこそ光がある。生きてさえいれば、絶望はしない」の言葉に、障がいの告知を受け苦悩する親への思いを感じました。
親、周りの人が世俗の物差しを当てず、障がいを持った子どもの良いところに気付くことが大切だと再認識しました。
(広報出版委員 居木)