2015/12/28委員会コラム
インフルエンザ予防対策 vol.1
インフルエンザの感染力は非常に強く、日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスによる気道感染症です。
毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンがほとんどですが、夏季に患者が発生し、インフルエンザウイルスが分離されることもあります。流行の程度とピークの時期はその年によって異なります。インフルエンザウイルスはA、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。
感染経路
●飛沫感染…感染した人の咳やくしゃみなどの飛沫に含まれるウイルスを口や鼻から吸い込んでうつります。
●接触感染…感染した人の鼻咽頭分泌物を直接、間接的に触ってうつります。
潜伏期間と症状
発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛
などの症状が突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間の経過で軽快します。「かぜ」に比べて全身症状が強く、特に高齢者や、呼吸器・循環器・腎臓に慢性疾患を持つ方や、代謝疾患、免疫機能が低下している方は、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており、入院や死亡の危険が増加します。小児では中耳炎の合併、熱性けいれんや気管支喘息を誘発することもあります。
診断
治療・予防対策
抗インフルエンザ治療薬(ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビルなど)を発病後48時間以内に服用すれば症状を軽くし、罹病期間の短縮も期待できます。対症療法として解熱剤や合併症を予防するために、抗菌薬の投与が行われることもあります。
- 日頃からの十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、流行期に人込みを避けること、それが避けられない場合などには不織布マスクを着用すること、外出後のうがいや手洗いを励行します。アルコール消毒も有効です。
- インフルエンザワクチン(2015-2016シーズンは4価)は、感染や発症そのものを完全には防ぐことはできませんが、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されており、効果はおおむね、接種2週間後から5ヶ月間です。12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいでしょう。
外出及び就業を控える期間
『発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで出席停止』
しかし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。
(学校保健安全法出席停止期間の基準より)
医療機関や施設等でのまん延防止対策
●発生前から行う対策
日頃から感染症の発生動向を把握します。また、施設内の患者及び職員の健康状態を把握し早期に対応できるよう、施設内でのインフルエンザの報告体制を確認します。
●発生後に行う対策
- インフルエンザ感染・発症が疑われた場合は、可能な限り個室隔離を行います。多数の患者が発生した場合には、患者を集め大部屋の使用も考え、未発症の患者と接触するのを避けることが重要です。
- 感染拡大防止のために共同のリハビリやレクレーションなど、多くの人が集まる場所での活動の一時停止、面会者への説明や必要時制限等を検討します。
- インフルエンザが施設内で発生した場合は、他の患者に対しては、承諾を得た上で、予防投薬(7日から10日間)を検討します。
●アウトブレイク時の対応
医療機関、社会福祉施設・介護保険施設等報告基準に応じて保健所へ相談してください。
感染症情報入手先
(参考・引用文献)
- 厚生労働省/インフルエンザQ&A、施設内感染予防の手引き
- 国立感染症研究所感染症情報センター/インフルエンザ
- 日本感染症学会提言2012